『永楽帝〜大明天下の輝き〜』を見ていて、馬和(のちの鄭和)が燕王妃(徐妙雲)に忠実に仕えていることに驚きました。漫画『海帝』では燕王妃は出てきていなかったような…
気になったので『海帝』を読み直してみました。
全然でてこなかった(^_^;)
そんなことはどうでもいいんです。
どーでもえーんかい!
改めて「この漫画はいい」
『海帝』を読んでから、明朝ドラマを見ると、外から大明帝国を観察するようで非常に面白いです。歴史を横の軸で俯瞰する感覚です。
逆に『大明皇妃』や『永楽帝〜大明天下の輝き〜』を見てから、『海帝』を読むと「あの戦いの時か!」とか「まさか建文帝が!」「姚広孝のルックスが全然ちがうなぁ」と細かいところを比較して楽しむことができます。
疑い深い永楽帝に海軍並みの船団を任された鄭和。『海帝』を読むと、鄭和という人は従来の宦官の枠にはまらない唯一無二の存在であったことを感じます。歴史好き、中国ドラマ好きならきっとハマる『海帝』をネタバレしないようにご紹介します。
鄭和とは
鄭和という人物の詳細は『海帝』を読むのが一番!
ではありますが
『海帝』は長いから、買うかどうか決められんわ!
というあなたのために、簡単に紹介します。
鄭和のプロフィール
- 名前:馬和または馬三保
- 1371年出生 (日本:足利義満の時代)
- 1433年没 (日本:足利義教の時代)
- 出生地:雲南省昆明州(現:昆明市晋寧区)
- 13才で藍玉・傅友德軍にしたがい南京入り 翌年、同軍に従い北京へ
- 北京で燕王(朱棣)に抜擢され仕えるようになる
- 28才:靖難の役で功を立て、鄭という姓を賜る
- 34才:永楽帝(朱棣)の命で第一次下西洋に出発
- 62才:第七次下西洋の途中で死去(インド・ケララ州コジコード〈旧称カリカット〉という説あり)
生没年については、現在も研究中ですが,百度百科に掲載されているものを記載しました。
元の時代に多くの西域のイスラム教徒が雲南に連れてこられました。鄭和(馬和)の父・馬哈只もその流れをくむイスラム教徒とされています。“馬”という姓はイスラム教徒に多いのだそうです。
藍玉の軍に従って南京入りと知り、酷い目にあったのでは?と心配になりました。
『永楽帝〜大明天下の輝き〜』の藍玉はやなヤツだったな!
1404年に鄭和は日本を訪れています(下东洋xià dōngyáng)。 明朝と室町幕府は外交関係を結び、勘合貿易を開始しました。『海帝』では鄭和は足利義満と対面する場面が描かれていますよ。
鄭和が下西洋xià xīyáng(日本語では鄭和の南海遠征)の大役に抜擢された理由の一つは、イスラム教と仏教両方のバックグラウンドがあったからだと言われています。
航海前に鄭和に法名を与えたのは、あの姚広孝だ。
鄭和の航海について謎が多いのは、資料が消失しているからです。一説によると、多額の費用がかかる航海を再開できぬように役人が焼却したのだとか。なんとも残念な話です。
『海帝』ってどんな漫画?
- 作者:星野之宣
- 出版社:小学館
- 掲載誌:ビックコミック 2018年〜2021年
- 単行本:全9巻
- 内容:中国明朝の宦官・鄭和が永楽帝の命を受け、大船団を率いて遠洋航海にいどむ物語
『海帝』は骨太な漫画で、かなり史実に基づいて描かれています。「ホントにそんなことあった?」と思う設定もありますが、時代考証的にありうるところが好奇心をかきたてられます。
資料が少ない鄭和の人物像の解釈が素晴らしいです。「こんな人物でないと大船団を率いて7回も航海できないわ」と納得してしまうほど巧みに鄭和の人間性が描かれています。
歴史ファンタジードラマよりもリアルだよ
まず、鄭和が永楽帝に仕えるまでの物語が壮絶。
家族と暮らしていた平凡な日々から宦官になる過程は、大明帝国の国土掌握のすさまじさと燕王(朱棣)の苛烈な人柄があらわれています。
さらに燕王(朱棣)のもと漠北で戦うシーンも強烈。本当にこんなエピソードがあったのかは不明ですが、猜疑心の強い燕王(朱棣)から信頼され、仲間が「例え危険な戦や航海であってもついて行こう!」と思える優れた人間性の持ち主であったことを示す名場面です。
ビックコミックさんのHPから第1話を試し読みできますよ。
読むと面白い部分
第1巻の巻末の宗像教授による『海帝』豆知識は必読です。
たった見開き2ページですが、まだ謎の多い鄭和の航海について、資料に基づきわかりやすく図解されています。
本編はもちろん面白く、迫力のある絵でストーリーが展開されていきます。時々「ホント?」と思う話が出てきます。
ジャワの猿神の話(第3巻)はその典型です。奇想天外エピソード?と思いきや、最後に当時の記録と現代の調査結果が示され、猿神も信ぴょう性を帯びてきます。
きちんと歴史考証がされた上でのフィクション・『海帝』は読み進める度に、鄭和の航海に思いをはせてしまう作品です。
作者・星野之宣さん
今夜10時からNHK Eテレ「浦沢直樹の漫勉neo」は星野之宣さん登場!以前からいったいどう描いているんだ?と星野作品の単行本をじっくり見て研究したものですが、今夜その謎が明らかに!結論を先に言ってしまえば、やはり超絶に上手い!でした。すごいですよ、是非! #星野之宣 #浦沢直樹 #漫勉neo pic.twitter.com/yr5o6ml2ex
— 浦沢直樹_Naoki Urasawa公式情報 (@urasawa_naoki) October 22, 2020
『海帝』という漫画をドラマ化したらすごいのに!と思いましたが、すぐ考え直しました。
『海帝』は映像化できない。いや、映像化しても漫画を超えることは難しい。
作者の星野之宣さんの画力はプロから見てもずば抜けているのだそうです。NHKの番組で『YAWARA!』の作者として知られる浦沢直樹さんが、星野之宣さんの『海帝』製作に密着する漫勉neoは、ぜひ再放送してほしい番組です。配信もしていないようです。NHKはせっかく良いコンテンツを持っているのだから配信すればいいのに!と思います。NHKさん、再放送または配信ご検討ください!(2024.7月の情報です)
『海帝』を読む方法
『海帝』を読む方法は大きく分けて2つです。
- 紙媒体
- 電子書籍
紙媒体
『海帝』は単行本になっていて全9巻です。
紙の漫画の良いところはページをめくるワクワク感ですよね。
友達に貸して感動を共有できるところや、誰かに譲ることができる点も電子書籍と大きく違うところだと思います。
本屋さんやネットで購入できます。
電子書籍
電子書籍の良い点はかさばらないところです。通勤通学に紙のマンガ9冊を持って移動できないけど、電子書籍なら余裕で持ち運びできます。
らーじゃおの場合
ちなみにらーじゃおは電子書籍で『海帝』を読んでいます。
U-NEXTのポイントが期限ギリギリで使わないともったいない!
と1巻購入したのがキッカケ。ずぶずぶ沼にハマって全9巻、ポイントで買いました。U-NEXTは月額サービスを解約しても、アカウントを残しておけば購入した本や漫画は変わらずに見れます。ポイントがたまっている人は、こんな形で『海帝』を読むことが出来ますよ。
『海帝』の感想
『海帝』は鄭和の伝記ではなく、伝説だ。
これが全9巻を読み終えて最初に思ったことです。
鄭和の資料というものは本当に少なく、私が確認できたものは、明史・列伝192 宦官、明史・列伝213 外国6、『星槎勝覧』(費信著 鄭和の航海に同行した際の南・東南アジア旅行記)と『瀛涯勝覧』(馬歓著 鄭和の航海に通訳として随行した際の見聞録)くらいです。
少ない記録をもとに、星野之宣さんによって命を吹きこまれた海帝・鄭和。
『海帝』には、鄭和の人間愛の深さが形成される過程が描かれています。それは「宦官という運命から逃げずに人生を切り拓いた」からだと感じずにはいられません。宦官であるがゆえに悩み苦しみ、人として磨かれていった鄭和。逆に宦官でなければ、このような偉業を成し遂げられなかった…とすら思えてきます。
同時にスマトラの海賊やスリランカとの戦いでは多くの現地民を武力で制圧する様子が美化せずに描かれています。
目的は目的、敵は敵、ってところがなければ、任務を完遂できないってことね
『海帝』は冒険の物語のようですが、根幹は「困難な状況にあって、人としてどう生きるか」という問題を鄭和の生き様と共に突きつけてくる作品です。 鄭和と同じようにスケールの大きい漫画といえます。
「放っておいたら死ぬ命を救ってどこが悪い! これから何度でも何人でも…助ける‼」
鄭和のこのセリフは読み終わった後も、ずっと心に残っています。
この記事が『海帝』に興味をもつキッカケになれば、とてもうれしいです♡
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