Twitterをリアルタイムで追いながら見ている三国志 司馬懿~軍師連盟《原題:大军师司马懿之军师联盟》。
期待以上におもしろくて、すっかりハマっています。
曹操、劉備、孫権らに比べなじみの薄い曹丕と司馬懿のドラマであり、知らないことが多く逆に興味をかきたてられます。
私にとってリアタイ視聴の楽しさは「みんなと一緒にみている感じ」「同じところにツッコミいれてた!」「~はそういうことだったのね!知らなかった」という一体感・共感・発見にあります。
25話で司馬懿が朝廷の重鎮・鍾繇の助けを得るために父・司馬防のお宝である蔡邕の書を贈るエピソードがありました。手元に置くのが負担に感じるほど貴重な物ゆえに、周りまわって司馬懿の元に舞い戻りそうになる…といういわくつきの蔡邕の書。
どんな字なんだろう!
その時Twitterで教えてもらった情報がこちら。
熹平石経 https://t.co/6RHaNQA7vK #軍師連盟
— は⃝ㄘろʑ̀もԽ❁❁ (@kyara0930) May 18, 2022
蔡邕の書は熹平石経というのだそうです。
後漢の末期に董卓が長安へ遷都する際に多くが失われたという熹平石経。
司馬懿パパが所有していた…というのは史実ではないようですが、25話のエピソードの頃、すでに壊されていて多くの人が残念に思っていたことは想像できます。
その熹平石経が台東区立書道博物館にあることを知り、早速見に行ってきました。
熹平石経だけではなく、三国志 司馬懿~軍師連盟に関連する所蔵品も展示され、中国の歴史や文化に興味がある人なら楽しめる博物館でした。
迷わないように駅からの行き方も画像付きで紹介します。興味のある方は是非行ってみてくださいね。
書道博物館とは
洋画家・書家であった中村不折(1866-1943)さんのコレクションを基にした専門博物館。
中国と日本の書道に関する重要なコレクションを展示しています。
殷の甲骨から青銅器、石、レンガ、瓦、墓誌、仏像、拓本、書…と多岐にわたる収蔵品から漢字の歴史や、書法の変遷を見て知ることが出来る場所です。
台東区立書道博物館
- (所在地)〒110-0003 台東区根岸2丁目10番4号
- (電 話)03-3872-2645
- (入館料)大人500円 高・中・小学生250円
- (開館時間)午前9時30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
- (休館日)月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日) 年末年始 12月29日~1月3日 特別整理期間等:2022.6月13日〜27日(展示替えのため)
休館日の確認はこちらで→https://www.taitocity.net/zaidan/shodou/riyou/
中村不折さんとは?
中村不折さんを知らなくても、字はみなさん知っていると思います。
「新宿中村屋」、清酒「真澄」「日本盛」、「神州一味噌」、「筆匠平安堂」の看板の文字は中村不折さんが書かれたものなのです。
ああ!あの字ね。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の挿絵や島崎藤村の『若菜集』と伊藤左千夫の『野菊の墓』の装幀・挿絵も手がけています。
展示物
書道博物館は2つの建物があります。
本館では常設展が、入館受付をする中村不折記念館では企画展や特別展などが展示されています。
常設展(本館)
漢字が刻まれた石、青銅器、陶器、骨等が展示してあります。甲骨占いの骨もありました。
https://www.taitocity.net/zaidan/shodou/kannai/collection/にも一部紹介されています。実際はHP以上に豊富な展示で、私は常設展だけでも満足できました。
21世紀の私が「歴史で学んだもの」「ドラマで知ったもの」の本物を見ることが出来るというのは不思議な体験です。大切に保管してきた人たちの努力を感じました。
企画展(中村不折記念館):清朝碑学派の書
年に数回、企画展と特別展があるようです。
私が行ったときには「清朝碑学派の書」の企画展が開催されていました。
「この字、好きだな」「山を買ったとか道を作ったとか、意外な内容でも時がたてば鑑賞の対象になるのね」と楽しく鑑賞しました。書道に関して知識はなくても、作品にはわかりやすく説明と解説が書いてあるので、イメージをふくらませることが出来ました。
その中で印象に残ったのが、この2つの作品です。
瑯邪台刻石
秦の始皇帝が自分の功績を後世に残すために建てた石碑(頌徳碑)は全部で7つあったと言われています。そのうち現存するのは泰山刻石と瑯邪台刻石の2つだけです。
瑯邪台刻石は秦の李斯の書とされています。李斯といえばキングダムの「法の番人」!文字の統一をなしとげ、その文字で記したのでしょうね。
海中に沈んだこともあったらしく、年月を感じさせる細長い字でした(拓本です)。
紀元前219年の字を見ることができるって、すごくないですか?
石鼓文ー安国本ー
石鼓文とは鼓のような形の石に刻まれた四言詩で、内容は秦王の狩りの様子についてです。書体は大篆。紀元前500~400年の作品です。
本体の石鼓(10個ある)は北京の故宮博物館にあり、展示されていたのは拓本です。
私は行書や草書よりも隷書や篆書に惹かれます。石鼓文の字はすごく好き♡
紀元前に刻まれたとは思えない位、クリアな拓本にビックリ。
石鼓のように丸いもの、大きな崖に刻まれた字は、書く人・刻む人・拓本をとる人の技術が高くないと良い状態の作品を見ることは難しいのだな…と思いました。
三国志 司馬懿~軍師連盟ファン垂涎の書
熹平石経(常設展示:本館第3展示室)
ドラマの中では司馬防のお宝で、達筆だった鍾繇を小躍りさせた熹平石経とはどのようなものなのでしょうか?
~一日一書~#石経後記(#熹平石経 の部分)
— 成田山書道美術館【公式】 (@narishobi) April 28, 2022
漢時代・熹平年間(172-178)
最古の石経!
蔡邕らがそれまでの儒教の経典の異同を見直し、定本をつくりました
方正謹厳…真面目な印象です😲
【#田近憲三蒐集拓本と近代日本の書】展、開催中♪#田近憲三コレクション#田近憲三 #拓本 #成田山 pic.twitter.com/m6vApDh7Pq
熹平石経とは?
秦代の焚書坑儒で失われた儒学の経典は、時ともに誤って伝わった文章もありました。熹平4年(175年)に蔡邕たちによって儒学の経典を正訂作業が始まります。8年かけて刻まれた石碑は46枚。それらは正しい字句と書体を後世に伝えるために、洛陽城の開陽門外にあった洛陽太学(※)に建立され、観覧や書写が許されました。熹平石経を見るために多くの人が訪れ、交通渋滞がおきたほどでした。
(※)当時の国立中央大学
なぜ貴重なのか?
190年に董卓が洛陽の都を焼き払い、熹平石経も被害に遭いました。
その後の度重なる戦乱で石経の多くが失われました。発掘や調査の成果により、20数万字あったうち8800字余りの現存が確認され、西安碑林博物館、洛陽博物館、北京図書館などに収蔵されています。
また熹平石経の拓本は北京の故宮博物館に収蔵されています。
書道博物館の熹平石経
そんな貴重な熹平石経が日本の博物館でも展示されているとは驚きです。
書道博物館では「石経そのもの=字が刻まれた石」を見ることができます。
董卓軍が壊したということは、董卓だって熹平石経の前を通っていたかもしれません。「三国志に出てくる人物の数人は熹平石経を眺めているはず!」と思うとワクワクします。
書道博物館には熹平石経(儒家の七経:魯詩、尚書、周易、春秋、公羊伝、儀礼、論語)のうち、魯詩、儀礼、春秋、公羊伝の4種類が収蔵されています(石は6個くらいあったと思います)。
展示されている熹平石経をみて驚いたのは、その小ささです。「残石」という中国語の表現通り。
董卓軍め!よくも粉々にしてくれたな
それでいて1800年以上経っているとは思えないほど、刻まれた字ははっきりとしていました。
均整がとれた隷書で美しい、誰もが好むような字でした。音楽で言うとバッハ?モーツァルト?
「ああ、これが(ドラマで)司馬懿のパパが大切にしていた書なんだ。鍾繇が一目見たいと思っていた大切な宝なんだ。」と思い、見る機会を持つことができて有難いと感じました。
受禅表(企画展)
これはピーちゃんこと曹丕が魏帝になる時に書かれたものです。
書道博物館に展示されたものには作者は書かれていませんが、成田山書道美術館のブログには「鍾繇が書いたと伝えられている」と書かれています。もしそうだったら、すごい。ドラマと現実がつながってしまう\(^o^)/
曹丕の即位に至るまでの事もふれていて、とても興味深いです。
拓本の画像も掲載されています。
開通褒斜道刻石(企画展)
諸葛孔明がつかった道として知られる褒斜道開通における功績を刻んだもの。字の大きさが整っていないところが面白い書です。後漢の時代(66年)の物です。(展示されているのは拓本)
褒斜道の大きな崖に刻まれていたものですが、ダム予定地だったため13点を漢中市博物館に移置し、残りは現在は水没しています。
私は三国志 司馬懿~軍師連盟の43話を見終わったところなので、諸葛孔明は登場したばかり。この先に褒斜道が出てきたら感動するだろうな…。
グッズ
入り口の入場料を支払うカウンターのそばにミュージアムグッズが展示されています。
HPに紹介されているトートバッグの他に漢字の書いてある湯呑みや書籍もありました。
アクセス
書道博物館の最寄り駅はJR鶯谷駅(山手線で上野駅の次の駅)。徒歩5分で着きます。
書道博物館に行くには北口改札が便利です。南口に向かう人が多いので、気をつけてくださいね。
日暮里寄りのホームの端の階段をおり、地下道をぬけ、再び階段をあがると北口改札が見えます。
北口改札を出て、コンビニを右手に見ながら3mほど進むと、ドトールコーヒーやマクドナルドのある通りが見えます。書道博物館の看板もでていますよ。
左手にドトールコーヒーをみながら通りをすすみます。
大きな立体道路の下をくぐり、直進します。1~2分ほど歩き、右手に根岸小学校が見える「根岸小前」の信号を左折します。(歩道橋は渡りません)
大きな通り沿いに歩いて1つ目の信号「竹台高校前」にきたら、赤い矢印の方向に左折します。細い路地でホテルがあったります^_^; コインパーキングの角を右折すると、書道博物館が見えてきます。
オススメのお土産:竹隆庵岡埜の和菓子
鶯谷駅北口を出て、書道博物館に向かう最初の交差点(立体道路下)の右側角にある和菓子屋・竹隆庵岡埜。
美味しそうな和菓子がたくさんあり、中でも目をひくのはフルーツ大福。
私が行ったときにはキウイ大福、あんず大福、ブルーベリー大福がありました。季節によって色々あるのかな~?私が買ったキウイ大福は甘酸っぱくて美味しかったです。
カウンターの上には、ぼる塾の田辺さんオススメのこごめ大福もありました。
こちらも購入。お母さんが作ってくれるおはぎを思い出すつふつぶのお餅が美味しい大福です。
さいごに
台東区立書道博物館は三国志 司馬懿~軍師連盟ファンはもちろん、中国歴史好きの方もワクワクするような収蔵品を展示している博物館でした。
興味がある方、ぜひ行ってみてくださいね。
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