U-NEXTで中国映画を楽しんでいる らーじゃおです。
U-NEXTは作品数がたくさんあり、いつも何を見ようか迷うんですよね。今回とくに気になる作品を2つ紹介しようと思います。そのうちの1つがこちら……
『黄金時代 THE GOLDEN ERA』
日本ではあまり知名度が高くない作家・蕭紅の生き様を描いた文芸作品ですが、アン・ホイ監督、タン・ウェイさんとウィリアム・フォンさん主演という豪華な顔ぶれ。
U-NEXTさん、Good choice!日本語訳で見たかったんです。
こういうニッチな作品の配信は珍しいのでうれしい♡
タン・ウェイさんは出産後の復帰作にビー・ガン監督の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』に主演するなど、出演作品のチョイスがアーティスティックな俳優さんです。この『黄金時代』も独特の感性が光る作品といえるでしょう。(※ビー・ガン監督は『凱里ブルース』で有名な若手映画監督)
この記事ではキャストやあらすじ・感想、視聴方法を紹介しつつ、本作品の魅力にせまっていきたいと思います。
作品情報と評価
『黄金時代』の予告編です。
許鞍華(アン・ホイ)監督の作りだす美しい映像をご覧ください。
作品情報
タイトル:黄金時代《原題:黄金时代》英文題:THE GOLDEN ERA
公開:2014年10月公開(中国・香港)
監督:許鞍華
主演:湯唯 馮紹峰 王志文 朱亜文 黄軒 郝蕾 袁泉
馮紹峰は『明蘭~才媛の春』の顧廷燁を演じていた俳優さんだね
評価
豆瓣排行榜:183811人が評価 7.4(10点満点中)
- 1位『ショーシャンクの空に』: 9.7 (2870381人が評価)
- 2位『さらば、我が愛覇王別姫』:9.6
- 3位『タイタニック』と『フォレストガンプ』: 9.5
1~3位は200万人以上が高評価をつけています。『黄金時代』は人数も評価も中ぐらい、というところでしょうか。
U-NEXT:3.5(5点満点中)
評価は思ったより低め
主な受賞歴
ノミネートを含めると膨大なので、受賞したものだけを紹介します。
第51回台湾電影金馬奨:最優秀監督賞(許鞍華)受賞
第34回香港電影金像奨:最優秀電影賞 最優秀監督賞 最優秀撮影賞 最優秀衣装デザイン賞 最優秀美術指導賞 受賞
第30回中国電影金鶏奨:最優原作脚本賞(李樯)受賞
第9回アジア電影大奨:最優秀監督賞(許鞍華) 最優秀助演男優賞(王志文) 受賞
こちらは高評価だね!
視聴者の評価と、映画界での評価がかなり違うことに驚きます。私は作品を見て、納得する部分がありました。若干ネタバレになってしまうので、最後の感想のところで私の思いを書くことにします。
黄金時代◇あらすじ
中国の女流作家・蕭紅の31年の短い人生を彼女の文章と友人の言葉で紡ぐ文芸作品。
祖父だけがよりどころだった幼少期、愛情への飢えを感じさせる青年期を経て、仲間や魯迅にその文学的才能を認められ始めた蕭紅。やがて戦争の影が色濃くなり、情愛のもつれや激しい時代の潮流の中で、彼女が大切にしたものと失ったものとは…。
黄金時代◇見どころ
らーじゃおが「黄金時代」に興味をもったのは、主演の湯唯さんが好きだからです。蕭紅の作品は少ししか読んだことがありません。(中国語のものを図書館で借りました。)
蕭紅について知識がなくても楽しめる?『黄金時代』の見どころを紹介します。
映像の色合いが美しい!
蕭紅はハルピン、青島、上海、西安、東京、山西、武漢、重慶、香港と各地を転々とするのですが、映像の色合いでその土地の気候を感じられます。
ハルピンの凍てつくような寒さは寒色と茶色系のノスタルジックな映像。
その色合いはセザンヌの《カード遊びをする人》を思い起こさせます。この厳しい寒さが、蕭紅の生い立ちの過酷さと重なり、人の温もり必要とした蕭紅の生き方に説得力を与えているように感じるのです。
青島や上海では湿度を感じました。雨の日に内山書店にいる魯迅をたずねるシーンは印象的です。
山西省や西安は乾いた黄色い大地の香りがしました。
各地の映像美に、蕭紅の心情が重なっているように思うのは私だけでしょうか。
旗袍(チャイナドレス)
女性の衣装(旗袍・チャイナドレス)も魅力の1つです。旗袍の中国語に関する記事でもとりあげましたが、この映画は旗袍がすてき。衣装が悪目立ちすることなく、俳優の表情や心情と一体となっています。絹や刺繍の豪華な旗袍ではありませんが、それが登場人物をより知的に見せています。
蕭紅の文章
時おり出現する蕭紅の文章は、まるで本にはさんだ栞のようです。鮮烈な印象を残しています。
黄金時代◇登場人物・キャスト
ギャラはかなり安かったそうです。金額に関係なく「許鞍華監督と仕事がしたい」と集まった豪華なメンバーがこちら。
蕭紅(シャオ・ホン):湯唯(タン・ウェイ)
この映画の主人公 蕭紅
父親が勝手に決めた結婚から逃げたため、実家には戻れない。つきあった男に騙され借金を抱えてしまう。
許鞍華監督はキャスティングする時、一番に湯唯さんを思い浮かべました。“知的で儚げでありながら、内面に芯の強さが感じられる”ところが蕭紅のイメージに合っていたそうです。
湯唯さんは寒さと飢えの演技のために、薄着にサンダルという姿で外に出て凍える寒さを体感したり、食事を我慢したそうです。
主な出演作品『ラスト、コーション』『レイトオータム』『大明皇妃』
蕭軍(シャオ・ジュン):馮紹峰(ウィリアム・フォン)
のちに蕭紅の恋人になる男性 蕭軍
東北陸軍講武堂卒業のたくましい男性。蕭紅の借金の返済を助けるうちに、恋に落ちる。
演じているのは 馮紹峰:ウィリアム・フォン
許鞍華監督は「端木蕻良を」と考えていましたが、何も知らず台本を読んだ馮紹峰さんは蕭軍を希望したため、役が決まりました。
馮紹峰さんは、体重を増やし、飲酒量も多くして蕭軍の容貌に近づけました。
主な出演作品 『蘭陵王』『明蘭~才媛の春』『永楽帝~大明天下の輝き~』
魯迅:王志文(ワン・チーウェン)
『阿Q正伝』『狂人日記』『故郷』で日本でも有名な作家・魯迅
蕭紅・蕭軍が魯迅に手紙を送り、それから親交が始まりました。若手作家を優しく見守る存在。
演じているのは 王志文:ワン・チーウェン
「魯迅に似ている!」と話題になった この作品で第9回アジア電影大奨の最優秀助演男優賞を受賞しました。
主な出演作品 日本で公開されているのは、映画『墨攻』や『 始皇帝暗殺』
『始皇帝暗殺』では嫪毐を演じていました。(ちょっと風間杜夫さんに似た嫪毐で、すごく印象に残っています).
端木蕻良:朱亜文(ジュー・ヤーウェン)
蕭軍の友人の作家。蕭紅と知り合う前から、蕭紅の《生死之場》を読んで感銘を受けていた。
演じているのは 朱亜文(ジュー・ヤーウェン)
てかてかの7:3分けで登場し、真面目な誠実さで徐々に蕭紅との距離を縮めていく端木。「うんうん、恋愛に疲れた時、こんな人がそばにいると好きになっちゃんだよな。ましてや朱瞻基だし♡」なんて思いながら見てしまいました。
主な出演作品 《紅高粱》『大明皇妃』『孫子兵法』《闯关东》
丁玲:郝蕾(ハオ・レイ)
蕭紅の数少ない友人のひとり。作家で社会活動家。蕭軍と蕭紅のよき理解者である。
映画の中では作家よりも抗戦や革命に力を入れているように見えましたが、実は張家口に記念館が建っているような有名な作家です。文化大革命の時は大変な目にあっており、蕭紅と同じく波乱万丈の人生を送った実在の人物です。
演じているのは 郝蕾(ハオ・レイ)
『4枚目の似顔絵』では金馬奨の助演女優賞を受賞しています。個性的な作品に出ることが多い俳優さんなのかな?日本で見られるのは『黄金時代』と『最愛の子』だけと思っていたら『鶴唳華亭』にも出演されていました。皇太子が母のように慕う張尚服です。『ナミヤ雑貨店の奇蹟–再生-』もUーNEXTで配信されていますね!こちらは東野圭吾原作、ディリラバ主演です。
主な出演作品 『4枚目の似顔絵』『天安門の恋人たち』『最愛の子』『ナミヤ雑貨店の奇蹟–再生-』『鶴唳華亭』(第1-2話に登場)
駱賓基:黄軒 (ホアン・シュアン)
どこにでてるの?と思ったら、最後の方に登場。蕭紅が30~31歳くらいの頃だろうから、彼も蕭紅の崇拝者だったのでしょうか? こんなにカッコイイ男性たちにモテて羨ましい…と最後の方には思ってしまった。だって…朱亜文と黄軒がそばに付き添ってくれるなんて、ぜいたくすぎますよね。
主な出演作品 『風起洛陽』『海上牧雲記』『女医明妃伝』
黄金時代◇視聴方法
ちょっとマイナーな『黄金時代』は現在、日本の動画配信サービスではU-NEXTとHuluのみ配信中です。
以下、〇は該当あり、ーは該当なし を意味します。
備考欄に注意事項がある場合は確認してください。
配信会社 | 見放題 | レンタル(¥) | 音声 | 字幕 | 備考 |
U-NEXT | 〇 | ー | 中 | 日 | |
Amazon Prime | ー | ー | 中 | 日 | |
Netflix | ー | ー | 中 | 日 | |
Hulu | 〇 | ー | 中 | 日 | |
FOD | ー | ー | 中 | 日 | |
d-TV | ー | ー | 中 | 日 | |
RakutenTV | ー | ー | 中 | 日 | |
iQIYI | ー | ー | ー | ー | |
YOUKU | VIP | ー | 中 | 中 | 注) |
Tencent | VIP | ー | 中 | 中/英 | 注) |
上記は2023年6月の情報です。詳細は各サイトでご確認ください。
注)VIP会員のみ視聴可と表示されていますが、本編が見られるかは不明。2分程度の予告は見れました。
さいごに~感想
蕭紅の人生を忠実に映画化した『黄金時代』。映画の中の蕭紅に対する印象は
- あまり幸せではない生い立ちだったが、魅力的な人だった
- 文章の才能が光っていた
- 男性にモテた
我ながら表面的な印象ばかりですね。ここに、視聴者と業界の評価の違いが生じた理由があるように思えてなりません。『黄金時代』の真の良さは、蕭紅の作品を読んで初めてわかるのかも? 映像に美しさだけでも見る価値のある映画ですが……
蕭紅の作品を読んでから『黄金時代』を見たい!
と思いました。
私には「蕭紅の文章を読んで、もう一度この映画を見たら、違うことを感じるだろう」という確信があります。
蕭紅が日本に滞在するシーンで使われた文章が気になるのです。映画のタイトルである黄金時代という言葉が使われた唯一の場面です。
是的,自己就在日本,自由和舒适。
平静和安闲,没有经济上的一点压迫,这真是黄金时代,是在笼子里过的。
<拙訳>そう、私はいま日本にいて、自由で快適だわ。
心穏やかにのんびりしていて、お金の心配もない、本当に黄金時代だわ、籠の中の。
出典 :电影 黄金时代
時には大切な人と別れることになっても、静かな安心できる場所で文章を書くことを選んできた蕭紅。日本での執筆活動が充実していたのでしょうか。黄金時代という言葉は良い意味だと思うのですが、最後の ‶是在笼子里过的。”という一節にどこか不満や後悔の念を感じます。この頃、蕭紅はどんな作品を書いていたのでしょうか。
あなたはどう思いますか? 『黄金時代』の感想を教えてもらえたらうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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